王子様とらゆ

おうじさまとのまいにち

ウィル王子本編第8話王家の確執2

「……じゃあ、また後でな。ウィル、らゆさん」


ティーヴさんは、フッと微笑むと、私達に背を向けて歩き出していった。


「あ、そうだ。ひとつ、言い忘れた……」


「……」


ティーヴさんが私達の方へと振り返り、人差し指を立てた。


「ウィル。お前のそんな顔、初めて見たよ」


そう話すスティーブさんは、どこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。


そして後ろ手に手を振って、去って行ってしまった。


「あの方が……お兄さんだったんですね」


「……ああ


私がつぶやくと、ウィル王子が短い言葉を返す。


ウィル王子は、困ったような顔を浮かべ、小さく息を吐いた。


「俺の部屋、くる?」


「部屋……ですか!?」


(ウィル王子の部屋……?)


(……どうしたんだろう?)


「行こう」


私が、返事できずにいると、ウィル王子が部屋へと向かって歩き出していった。

 

洗練された家具や調度品が、主張しすぎない程度に並ぶ、ウィル王子の自室。


部屋の中はどことなく無機質で、自室というよりは、書斎のような印象があった。


(余計なもので飾ってなくて、ウィル王子らしい部屋だなぁ)


私が小さくなりながらソファーに腰かけていると、メイドさんが、手際良くテーブルの上にティーセットを並べていく。


「失礼、致します……」


「ああ。ありがとう」


扉が閉まった途端に訪れる沈黙。


私は気まずさを隠すように、紅茶を口に運んだ。


(王子様の部屋に招かれる……)


(良く考えたら、すごいことのような気がする)


私が、遅ればせながら緊張していると、ウィル王子が私の隣に腰を下ろした。


そして、長いまつ毛を何度か瞬かせて、私の顔を覗き込んだ。


「な! なんですか!?」


「スティーヴのこと、聞きたいんじゃないの?」


「えっ?」


つづく