ヘンリー王子本編第15話SHプリンセスになる魔法9
「キミが大量のレシピ集なんて置いて行くから……」
「料理長が、毎朝、気を利かせてキミのレシピでパンを焼く」
「……」
「厨房から、小麦粉とバターの香りがする度に、俺はキミを思い出す……」
「もしかしたら、焼いているのはキミなんじゃないかと、毎朝、期待しては落胆する……」
「……」
「キミと過ごした時間……」
「キミが言うように、確かに小麦粉とバターの香りの中には幸せの神様が住んでいるのかもしれないと思った。けど、違った……」
「……」
「俺の幸せの神様は……小麦粉とバターの香りがする、キミの中に住んでいたんだ」
「どうして……そんなこと……」
ヘンリー王子はピタッと立ち止まると、小さく息をついた。
「好きだから……」
「え……?」
「決まってるだろう……キミが、好きだからだ!」
街中に聞こえるくらいの大声で叫ばれたその言葉に、私の頭は真っ白になる。
(今、何て……)
「ねえ、今のって……」
「愛の告白……!?」
周囲の声に、私はハッと我に返る。
「そんな……大声で、冗談は止めて下さい。周りに人だっているんですから……!」
「……本気だ」
「……」
「誰に聞かれたっていい……何度だって、叫んでやる」
「……」
(私……夢を見ているの……?)
(会いたさが募って……幻覚を見ているの……?)
つづく