王子様とらゆ

おうじさまとのまいにち

ウィル王子本編第8話王家の確執1

「いるけど。今は、いない……」


“ご兄弟はいらっしゃらないのですか?”


私の質問を受けて、ウィル王子の表情に影が宿った。


(あの返答には、一体、どういう意味があったんだろう……?)


「お兄さん、だったんですか……」


(だけど……ウィル王子の兄であるスティーヴさんが、どうして、セシルさんと一緒にいたんだろう?)

(それに……セシルさんは涙を流していた)


私はつい先ほどのできごとを思い返しながら、スティーヴさんをそっと見上げた。


「まあ……。兄だと思われてないかもしれないけどね」


(言われてみれば……。久しぶりの再会っぽいのに、感動の対面って感じじゃない……)


ティーヴさんが自嘲気味に笑うと、ウィル王子が少しつらそうに目を伏せた。


そして、ウィル王子は私を背中に隠すと、突き放すような眼差しでスティーヴさんを見つめた。


「何しにきた? 今更……」


“今更”その言葉に、深い意味が宿っているように感じる。


ティーヴさんはウィル王子の眼差しをかわすように、肩をすくめた。


「ちょっと、王妃に呼ばれてね。ウィル、お前、何か問題でも起こしたか?」


(問題……?


(ひょっとして、私のことじゃ……)


ここ最近の様々なできごとがフラッシュバックする。


ウィル王子たお城を抜け出したこと。

クレープを食べに出かけたこと。


おとがめを受けるようなことに、思い当たる節があまりにも多い。


「俺はスティーヴじゃない。問題など……」


「そっか……そうだよな」


ウィル王子が吐き捨てるようにつぶやくと、スティーヴさんが自嘲気味にフッと微笑んだ。


「確かに、ウィル、お前はいつだって、この国の為に必要なことだけをしてきたもんな」


「スティーヴ。らゆの前で、それ以上口を聞くな」


突き刺すような眼差しで、スティーヴさんをにらみつける、ウィル王子。


一瞬、空気が凍りつく。


(ウィル王子とスティーヴさんの間に……、一体、何があったというの?)


つづく